麦  踏  み              ー教育を考えるー

 

  最近はいじめや体罰の報道がマスコミを賑わしています。いじめや体罰への対応が遅れ、風船がぱんぱんに膨れるまで放置されて、いよいよパチンとはじけて、不幸な事態につながっています。世評は、いじめ反対、体罰反対、で、「褒めて」育てましょうという方向が多いように感じます。

 

  フッと「麦踏み」という言葉があったなァと思い出しました。農業の方、年配の方はご存じと思いますが、聞いたことがない方も多いかもしれません。以前は、西日本でも田畑の二毛作の裏作として、秋から、麦を栽培していました。まだ農業に人力が多く必要であった頃の話です。「麦踏み」は、早春の寒い時期の作業で、発芽した麦苗を足で踏みつける作業のことです。10日くらい間を空けて、2度、3度繰り返し行いました。その時期になると家族総出で田畑に出て、畝に植えられた麦苗を足で踏んで、踏み倒していくという作業を行っていました。子ども達もズック(スニーカー)を履いて、一生懸命踏みました。

 

  こうする事によって、麦の若苗は、霜害に強くなり、根が張り、茎が太くなって、枝分かれもする、成長してから風が吹いても茎が折れにくくなる、とのこと。母から「麦が丈夫になって、収穫も多くなるからね、ガンバッテ踏んでね!」と激励されて、子どもの私達も、精一杯の体重を掛けながら、麦苗を踏んだのを思い出します。

 

 人の子育てにも、麦踏みのような、軽い試練は必要かも知れません。子どもに軽い試練を与えることにより、しっかり根を張らせ、多少の困難に遭っても、はじき返して元気に育ち、結果として、健康で幸せな人生を送れるとしたら、それは愛情をそそぐ育て方とも言えるでしょう。「褒めて育てる」ことは、大変重要な一つの方法ですが、それだけでは、一本太い芯の通った子どもには育たないかもしれません。ホラ、西洋の諺にもありますね。

   Spare the rod,  Spoil the child!

   〔鞭を惜しんで、子どもをダメにする〕

                          (2013.5.15)

成長した麦の出来(麦踏みあり と なし)
成長した麦の出来(麦踏みあり と なし)